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古典の教科書はネタの宝庫。
「夏候惇、どこに居るのだ?鴻霖!」
「存じ上げませぬ」
曹操の問い掛けに素っ気無い答えを返し、鴻霖は愛馬の背を撫でる。
商家の出身であり万事に通じた鴻霖は兵站を取り仕切り、根っからの武人である夏候惇は青竜刀を振るって切り込んでいく。
後方支援と前線、布陣に違いがあれば、同じ国王の側臣だとしても行動を共にすることは少ない。
女官装束ではない鴻霖を見て、曹操は残念そうに舌打ちをした。
「男物は随分と地味な服を着るのだな」
「武将たるもの、華美よりも智勇を備えるべきかと思いますが?」
鴻霖の口調はどこまでも冷ややかながら、曹操を侮蔑する響きはない。
曹操も、鴻霖の慇懃無礼な態度に満足気に頷いた。
手弱女のような容姿とは真逆の冷たさが、鴻霖を男らしく見せる。
「うむ。やはり儂の部下は質実剛健でなくてはな」
「曹操様、夏候惇殿が前方よりいらっしゃいますが」
「元譲!探したぞ」
「孟徳、と鴻霖か」
「こんにちは、夏候惇殿」
「鍛錬か。精が出るな」
諸国を放浪し、海千山千の鴻霖は、武官としても文官としても有能で通っている。
奴隷市場で姉弟ともに宰相だった王允に買われ、蝶よ花よと育てられていた日が遠く感じられた。
今では曹操配下の宿将の一人であり、慕ってくれる兵士や領民が数多く存在する。
表向きの女官長の仕事など全くしていないが、後宮に入るときは渋々ながらも女装せざるを得ない。
「元譲よ、折り入って頼みがある」
「断る!お前のは頼みではなく我侭だろうが」
「ほう。では鴻霖」
「……………………なんでしょう?」
「そう露骨に嫌そうな顔をするでない」
「嫌な顔の一つもしたくなりますよ」
こういうときの曹操は、ろくでもないことを考えているに違いない。
否、絶対に考えているに決まっている。
夏候惇と鴻霖は顔を見合わせて溜め息を吐く。
曹操の我侭に付き合うのは自分たちの役回りなのだと半ば諦観していた。
「して、頼みとは?」
「呉の土地が欲しくてな。鴻霖、少し情勢を探って来い」
「橘や柑なら俺が買ってきますから、そんなことで侵略戦争を仕掛けようとしないでください」
乱世の奸雄と呼ばれるほど謀略に長けているくせに、つまらないことですぐ戦をしようとする。
そんな曹操に振り回され慣れた鴻霖は、主君の頭を思いっきりはたいてしまった。
(呉には橘は柑という美味の果実があったらしい。ウチでは我侭な曹操様。)
「存じ上げませぬ」
曹操の問い掛けに素っ気無い答えを返し、鴻霖は愛馬の背を撫でる。
商家の出身であり万事に通じた鴻霖は兵站を取り仕切り、根っからの武人である夏候惇は青竜刀を振るって切り込んでいく。
後方支援と前線、布陣に違いがあれば、同じ国王の側臣だとしても行動を共にすることは少ない。
女官装束ではない鴻霖を見て、曹操は残念そうに舌打ちをした。
「男物は随分と地味な服を着るのだな」
「武将たるもの、華美よりも智勇を備えるべきかと思いますが?」
鴻霖の口調はどこまでも冷ややかながら、曹操を侮蔑する響きはない。
曹操も、鴻霖の慇懃無礼な態度に満足気に頷いた。
手弱女のような容姿とは真逆の冷たさが、鴻霖を男らしく見せる。
「うむ。やはり儂の部下は質実剛健でなくてはな」
「曹操様、夏候惇殿が前方よりいらっしゃいますが」
「元譲!探したぞ」
「孟徳、と鴻霖か」
「こんにちは、夏候惇殿」
「鍛錬か。精が出るな」
諸国を放浪し、海千山千の鴻霖は、武官としても文官としても有能で通っている。
奴隷市場で姉弟ともに宰相だった王允に買われ、蝶よ花よと育てられていた日が遠く感じられた。
今では曹操配下の宿将の一人であり、慕ってくれる兵士や領民が数多く存在する。
表向きの女官長の仕事など全くしていないが、後宮に入るときは渋々ながらも女装せざるを得ない。
「元譲よ、折り入って頼みがある」
「断る!お前のは頼みではなく我侭だろうが」
「ほう。では鴻霖」
「……………………なんでしょう?」
「そう露骨に嫌そうな顔をするでない」
「嫌な顔の一つもしたくなりますよ」
こういうときの曹操は、ろくでもないことを考えているに違いない。
否、絶対に考えているに決まっている。
夏候惇と鴻霖は顔を見合わせて溜め息を吐く。
曹操の我侭に付き合うのは自分たちの役回りなのだと半ば諦観していた。
「して、頼みとは?」
「呉の土地が欲しくてな。鴻霖、少し情勢を探って来い」
「橘や柑なら俺が買ってきますから、そんなことで侵略戦争を仕掛けようとしないでください」
乱世の奸雄と呼ばれるほど謀略に長けているくせに、つまらないことですぐ戦をしようとする。
そんな曹操に振り回され慣れた鴻霖は、主君の頭を思いっきりはたいてしまった。
(呉には橘は柑という美味の果実があったらしい。ウチでは我侭な曹操様。)
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