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いつだって、俺は忘れないよ。
お前のことを考えて、一音いちおんに、心を込めて。
届いて欲しくない想いを乗せて、ホールの向こう側まで感動を届けるんだ。

『……いつの日か……君の笑顔が見れるまで……僕は泣いていよう……』

笑顔の仮面を被って 胸の痛みを押し殺して
君が幸せになるように祈って 自分の幸せを逃していく


『……紡ってさ』
『ん?』

次の曲のメロディーを聴きながら歌詞を作っていると、東がふと呟いた。

『ソロのとき、いっつも悲恋っていうか切な目な歌作るよな』
『東はどこまでもポップな曲だよな』
『そうそう』

二人で歌うときは、ハーモニー重視の歌。
しっとりのバラードも、ダンスナンバーも、ロックも。
全部、調和がとれた曲をコンセプトにして。
ふとした瞬間に口ずさんで貰えるような、そんな曲を目指している。

元々は俺も東もソロ、というかピンで活動してたんだけど、同じ事務所で同じ年、同期ということもあり、テレビや互いのコンサートにも何かと共演している。
俺のファンの中に東のファン、東のファンの中にも俺のファンっていう子も多くて。

「人気急上昇中の二人がユニットを組めば、相乗効果間違い無しだ!!」

……なんて、社長のひと言で今は主にユニット、たまにソロという形になっている。
まぁ社長はやり手だから、その読みは見事当たった訳なんだけど。

『俺、紡の歌好きだな~』
『俺もお前の歌好きだよ、ノリも良いし、なんか勇気づけてくれるってカンジ?』
『お前のは聴かせるんだよな、心に響く。さすが、うちの事務所一の歌唱力だな』

……東がそんな風に言うなんて珍しい。
いつもならそんなことは言わないのに。
……もしかして、もうあの命令が下りたわけ?

『社長から、なんか言われた?』
『……なんか、バンド組めって』

うちには、俺らと同世代のバンドが居る。
そいつらもめちゃくちゃ売れてるんだけど、東が入ってダブルヴォーカルになるんだそうだ。

『良いじゃん、お前前にバンド組んでたんだし』
『……紡はそれで良いのかよ?』
『しょうがねーよ。俺が言ってもどうにもなるもんじゃねーし』
『……どーせまたすぐにお前と組めるようになるよな?』

期待のこもった目で、俺を見てくる東。
とりあえず俺は嘘をつける性分ではないので、苦笑で返しておいた。

『……あ、じゃあこの曲お前にやるよ』

この曲、とは今作詞している曲で、東のために、というのは東がバンドデビューするのを祝って、という意味だ。

『良いのか?』
『あぁ。”俺とお前が不仲で解散”なんてマスコミに言われたくねーし』
『どーせ乗るなら”紡と東、美しい友情の一曲”って方が良いよな』

もっとも、俺らは不仲なんかじゃない。
社長が東にバンドデビューしろって言ったのも、きっと、これが俺の最後の曲になるからだろうし。
俺が居なくなったら、稼ぎ頭は東くらいだし。

そんな色々な想いは、笑顔で楽屋を出て行く東には言わないでおいた。

『……かんばれよ東、俺の分まで』




「……おい、東、テレビ見たか?!」
『なんだよ急に……え?』
「だからっ!!……紡、アイツ喉の病気に冒されててさ!この間の曲が最後の曲だったんだってさ!!」
「あの曲をレコーディングし終わった後すぐに入院したらしいけど、俺らのデビュー日の次の日に、病院で息を引き取ったって……」

……なぁ、東、俺の曲、お前に届いたか?

死ネタですみません
いや、なんでこれが片恋。シリーズに分類されるのかというとですね。
最近某ジャ○ーズ○ニアの関西弁二人組に胸がキュンキュン(古っっ!)しておりまして。
アイドルものを書いてみたかったんです。
で、トリップも最初はアイドル主人公にしようとして断念。
なのでどうせだからここに書いちゃえ!ということで書いてみました。

******************************


タイトルの「song of love」は、紡から東に向けての最期の愛の歌。
紡は余命半年と宣告されて、初めて東への想いに気づいたわけですが。
自分が死んでも、東には歌い続けて欲しかったんです。
「東には誰かが傍にいないといけないんです。俺には、もうそれができません」
とかなんとかを社長に言って、今回の東バンドデビューに至ったんですよ。
東はずっと知らないままでしょうけどね。

……、あ、そうそう、紡は東のバンドデビューの記者会見を見つつその曲を聴いたそうです、病室で。
それから何度もその曲を聞き返して、東のパートを口ずさみながら息を引き取ったみたいですよ。
悪性の腫瘍に冒されて声は掠れていたけれど、病室にいた関係者全員が涙するくらいの素晴らしさだったそうです。
ちなみに紡の最期の曲は、東の願いによってリリースされることなく、この世に現存するただ一枚のCDは今も東が大切に持っているようです。
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