ログその１６

（何が悲しくて、変態の魔の手に飛び込まねばならぬのか）

「婚礼？」
「あぁ」
「誰と、誰が」
「例の地方領主と、お前だ」
「……あの男は、美女なら見境なく手に入れたがるとは聞いたが？」
「お前も美姫として名高いだろう」


不本意ではあるが、確かに多少有名かもしれない。
宮中で行われる宴などには、華を添えるために引っ張り出されている。


「縁談を持ち掛けたら彼奴は必ず食いついてくる。その手中に入り込んで殺せばいい」


司馬懿の読みは正しいと言えるだろう。
だが、結婚してすぐに夫が死ぬとは、かなり不吉な女として世間に認識されるに違いない。
そうなると後宮に戻りにくくなる。


「どうにか婚約までに仕留めてやる……」
「せいぜい上手くいくよう祈ってやる」
「今日ほどお前を殺したいと思ったことはないな……」


痛む頭を抑え、低い声で呟いた。