ログその１７

(俺は、いつまでもお前のものだと言うのに)

「婚礼？」
「に、見せかけての暗殺だ」
「でも、花嫁衣裳を着るんでしょう？」
「……仲達のやつ、もっとましな策を考えればいいものを」


鴻霖が毒づくと、甄姫が上品に笑う。


「面白がっているだろう、洛」
「だって相手の男が哀れなんだもの。新妻に殺されるなんて」


今回の標的を頭に浮かべる。
脂ぎった狸親父だから殺すことに躊躇はない。
ただ、婚儀の作法やらが面倒だった。


「どうやって手に掛けるつもりなの？」
「式を挙げるまでに仕留める。大事になるのは避けたい」
「確かにね。それにしても、貴女が嫁ぐなんて国中の男が悲しむに違いないわ」
「俺は夫なんて持つ気はないんだがな」
「早く戻ってきてね。他の誰かのものになんてならないで」


悲しそうな女主の声が、胸を刺した。